2003年07月24日
匠の技と趣味の狭間の日-あるいは人に出会うことについて
昨日の晩、ある方から話を聞き、初めて紡いだ糸と、最近紡いだ糸の一部をあえて載せてみました。右側のポーチは一番最初に観光体験で紡いだものを、撚り合わせて編んだものです。糸の太さはバラバラ、編み時もグチャグチャ。手前の糸玉は撚りの方向を間違えたために毛糸にすらなっていません。
あえて載せたのにはわけがあります。
その方は最近、自家栽培の小麦を使ってパンを焼いています。なかなかの腕で、私は彼女の焼くあんぱんが大好きです。
昨日、彼女はあるフードコーディネーターが開いた製粉の講習に参加した時の話をしてくれました。
「自家製粉でパンを焼いているのですが、なかなかうまくできなくて」という彼女に、そのフードコーディネーターの方は「あなた、それは何回ぐらい焼いて“うまくできない”って言っているの?」と一言。
「10回ぐらいです」と答えた彼女に「ちゃんと粉や水の割り合いなどのデータを何百回もとって、繰り返した結果が“うまくできない”っていうならわかるけど、たかが10回で“うまくできない”っていうのは早すぎねっ」と一刀両断。
切り捨てられた彼女はちょっと凹み気味に「確かに、言っていることは正しいけどさ…」
その話を聞いて、思い出したことが。
去年の11月頃、羊毛で編み物以外に何ができるのか知りたくて、札幌にある織物の工房の門を叩いたことがあります。
「クラフト体験」というと、ただ何かを作って終わりというものもありますが、その方は織物や染色の仕組みなどを親切にいろいろと教えてくれました。
自分の作品やその作り方、アイデアなどを話しながら見せてくれたのが、スワッチを保存したファイル。(スワッチとは10センチくらいの織り地や編み地の見本でで、パターンや風合いを検討したり、目数や段数を数えて、実際に作る物の大きさを計算するのに使います。織物をする人が織り地のスワッチを作っているのはそれまで全く知りませんでした。)
彼女はそのスワッチを何百も作り、きちんとファイルしていました。毎日毎日、黙々とスワッチを織り続けたそうです。20センチくらいの厚さのファイルが数十冊、本棚に並んでいるのを見せ、「好きに見て構わないわよ」とさらりと言いました。
ああ、これがプロなんだな、と思いました。
何百、何千ものデータをとり、その技術を使って物を作る。それを楽しく見せることができるのが、匠の余裕。
手芸は、そういうプロがデータを見ながらお膳立てしたソースの部分を楽しむんですね。手芸キットがまさにそう。
今日、糸を並べて考えました。エラそうなことを言っても、まだまだ手芸の域を出ていないんですけどね。
いっぺんにたどり着くのは、絶対に無理。
一度に追い付こうとしてあせると、楽しくない。
失敗も、経験。妙な糸は何かに生かせばいい。一度に均質化したものを大量に作るのは工場の仕事です。
織物の工房にいたあの人と出会えてよかった。彼女が高いハードルを私に押し付けていたら、私は間違いなくあきらめていました。
ありがとう。
昨日、彼女はあるフードコーディネーターが開いた製粉の講習に参加した時の話をしてくれました。
「自家製粉でパンを焼いているのですが、なかなかうまくできなくて」という彼女に、そのフードコーディネーターの方は「あなた、それは何回ぐらい焼いて“うまくできない”って言っているの?」と一言。
「10回ぐらいです」と答えた彼女に「ちゃんと粉や水の割り合いなどのデータを何百回もとって、繰り返した結果が“うまくできない”っていうならわかるけど、たかが10回で“うまくできない”っていうのは早すぎねっ」と一刀両断。
切り捨てられた彼女はちょっと凹み気味に「確かに、言っていることは正しいけどさ…」
その話を聞いて、思い出したことが。
去年の11月頃、羊毛で編み物以外に何ができるのか知りたくて、札幌にある織物の工房の門を叩いたことがあります。
「クラフト体験」というと、ただ何かを作って終わりというものもありますが、その方は織物や染色の仕組みなどを親切にいろいろと教えてくれました。
自分の作品やその作り方、アイデアなどを話しながら見せてくれたのが、スワッチを保存したファイル。(スワッチとは10センチくらいの織り地や編み地の見本でで、パターンや風合いを検討したり、目数や段数を数えて、実際に作る物の大きさを計算するのに使います。織物をする人が織り地のスワッチを作っているのはそれまで全く知りませんでした。)
彼女はそのスワッチを何百も作り、きちんとファイルしていました。毎日毎日、黙々とスワッチを織り続けたそうです。20センチくらいの厚さのファイルが数十冊、本棚に並んでいるのを見せ、「好きに見て構わないわよ」とさらりと言いました。
ああ、これがプロなんだな、と思いました。
何百、何千ものデータをとり、その技術を使って物を作る。それを楽しく見せることができるのが、匠の余裕。
手芸は、そういうプロがデータを見ながらお膳立てしたソースの部分を楽しむんですね。手芸キットがまさにそう。
今日、糸を並べて考えました。エラそうなことを言っても、まだまだ手芸の域を出ていないんですけどね。
いっぺんにたどり着くのは、絶対に無理。
一度に追い付こうとしてあせると、楽しくない。
失敗も、経験。妙な糸は何かに生かせばいい。一度に均質化したものを大量に作るのは工場の仕事です。
織物の工房にいたあの人と出会えてよかった。彼女が高いハードルを私に押し付けていたら、私は間違いなくあきらめていました。
ありがとう。
Posted by Yah at 21:24│Comments(0)
│羊毛作業/糸紡ぎ