毛刈りシーンは何度も羊飼いさんたちの「バリカンでガー」を見ていたんで、「んー、もしかして、おもしろいかも」なんて思っていたんです。
足しげく通いお手伝いをさせてもらった折りにお願いして毛刈りをさせてもらうことに。ところが、羊毛の状態(予定していた日時に雨が降ったり)などで今日までのびのびに。
で、これまでにいろいろ入念に打ち合わせをしてきています。
体力のないわたしには、シェアラーがやっているように羊をお座りさせて押さえつけながら刈るなんて無理。そこで、四つ足を縛って転がして半身を剥いたら、反対に倒して半身を剥く、という方法をとることに。
朝、牧場に食事に出かける前の羊たちが無邪気にオハヨーオハヨーオハヨーオハヨーオハヨーとこっちを見ている時に、目的のヒツジをおじさんがヨッと捕まえて、手早くブルーシートの上に四つ足を縛って転がしてくれました。
ゲートを開けるとダーッと逃げ出すほかの羊。お腹がすいているから草地に行きたいのもあるけれど、1匹だけ捕まっちまったのがものすごく嫌な感じらしい。
そっちは放っておいて、毛刈り開始。わたしは汚れるのを覚悟しているので、作業用の簡易つなぎをきています。暴れないように、羊の頭にまたがって押さえながら刈るんですが、カンカン照りだったので、暑いー。
…見通しが甘かったのは、シェアリング用のハサミを用意したところからなんとなくわかっていたのよね…。
↓これ。
見た目は巨大和ばさみ。
バネが強いので、10回もニギニギするとくたびれてくる。
気分は握力を鍛えるこれ。
いやーん、なんてヒツジが暴れたりしたらつき殺すことになりかねないし、そうなると牧場主様のご迷惑になる。
で、10年前に購入した散髪用の鋏。人間用。
こいつに持ち替えてチョキチョキ。
ところが、人間の頭よりも羊の体はものすごく面積が広い。
あたりまえだけど。
こんなに広かったのか…。
肌を傷つけないように、と思うんだけど、繊細で柔らかな肌に白い毛が生えていると、だんだんどこから毛で、どこから皮膚か分からなくなってくる。
迷うわたし。
次第にぐったりしてくるヒツジ。ごめん。
とうとうおじさまが見兼ねてバリカンを出してきて、ガー、と。
1時間半。羊もおじさんもわたしもグッタリ。
ちなみにシェアラーは数分で仕事を終わります。で、二度刈りも少ない。
わたしの結果は、ぼろぼろ。惨敗でござる。
今日の主役だった羊ちゃんは、脚の縄をほどくとよろよろと立ち上がり、草地にひょこひょこ駆けていきました。
見ているとほかの羊たちがわらわら駆け寄ってきて「めー」「めー」「めー」「めー」「めー」「めー」とお互いに鳴きあいながら匂いを確認している。
その鳴き方たるや半端じゃない。
100メートルくらい離れたこちらまで聞こえるくらいの大声。
「たいへんだったねー」「見てたー」「見てたー」「見てたー」「たいへんだったー」「たいへんだったー」「ねー」「ねー」なんて言いあっているに違いない…。
ごめん、本当に悪かった。
今回は、毛の状態や毛刈りのタイミング、その他いろんな条件が重なった上「じゃー、ぜひわたしにさせてください、もうがんばりますから」という相当無理なお願いを牧場さんにお願いして、かなりの打ち合わせを行った結果だったりします。
それで惨敗なので、安易に「わたしも1頭まるごと毛刈りしたーい」なんて言うもんじゃないなぁ、と。
こんな安直なわがままにつきあい、貴重な午前中を丸まるわたしのために使っていただいた牧場主の田中さん、本当にありがとうございました。羊とおじさんに感謝すると同時に深く反省した日でした。
スピナーズファームさんの方でも別の角度から写真があります。
いろんな角度から写真をとってくれて送ってくれた祥さん、ありがとうございます。
来年からはちゃんと大人しく見ていよう。
おまけ:
家に帰るとYah母が。
「んー、大変だったしょ、で、シャワーは?」
「ちょっと休みたいんですが」
「シャワーあびてからね」
「昼からシャワーですか?」
「うん、そう、先にシャワー浴びといでよ、そしたらこっちでくつろいでいいから」
「…もしかして、におうんですか?」
「んー、くたびれてるのはわかるからヒツジ臭いとは直接言わないけどさ、居間にはいて欲しくないのよね、それだけ」
そうですか。